戦争から守り抜いた銘酒
見沼たんぼの地酒「九重桜」に想う
杉浦弘子
「神棚より金賞の賞状を撮ってよ」
そう言って薄暗い酒蔵に電気をつけてくれたのが、見沼たんぼの東部、さいたま市見沼区膝子にある大瀧酒造の5代目大瀧榮壽(えいじゅ)さん(昭和7年生まれ)です。
明治17年創業、存在感のある煙突が目印の大瀧酒造は、かつて徳川家康が日光東照宮に参拝する際に通った日光御成街道の一里塚近くにあり、見沼代用水東縁沿いの、まさに米と利根川の豊かな水に育まれた地域にあります。
ここで、「九重桜」のブランドで、芳醇な吟醸、個性豊かな純米酒などを醸しています。
初代は新潟から杜氏と共に埼玉の地に来て酒造りを始めました。
榮壽さんが子どもの頃の1941年に太平洋戦争が勃発、米もビンも王冠に使う鉄もコルクもみんな召し上げられたといいます。
父はフィリピンに出征、それでも家族は地元の人と酒造りを続けてきました。
戦中戦後は、モノ不足と増税という困難にも耐えながら、組合仲間と支えあって酒を守ってきたのです。
こうしてみると、「九重桜」は、苦難の時代を乗り越えてきた先代たちの希望の名前のような気がします。
冷酒が美味しい季節、見沼の酒を守ってきた人たちに思いを馳せながら、膝子界隈を爽やかな風と戯れながら散策してみるのも楽しいものです。
九重桜 大瀧酒造(株)
埼玉県さいたま市見沼区大字膝子663
電話番号:048-683-3006
営業日時:祝祭日を除く月曜日~土曜日
営業時間: 8:30~17:00
蔵見学(事前申し込み)
《受賞歴》
全国新酒鑑評会金賞を8回受賞。
その他、埼玉県知事賞、関信局春秋局長賞、東京農大ダイヤモンド賞などの受賞歴がある。
市指定 史跡
膝子一里塚(ひざこいちりづか)見沼区大字膝子527-1他
杉浦弘子(映画監督)
1953年川崎市生まれ。さいたま市緑区在住。女子美術短大卒。
東京版画研究所で銅版画を学び、その後テレビドキュメンタリーの世界に転身。
数多くのテレビ作品のディレクターやプロデューサーを務めた。
2014年映画『ぬくめどり~鷹匠の世界~』は初監督作品。
好きな言葉は「人は動物から自然の分け前を頂いてる」。
【2020年4月10日発行 アコレおおみやno.45 掲載】
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